秋冬のアメカジ大定番アウターといえばスタジャンが有名だが、特有のポップな印象や短い丈の長さが気になって着こなしにくいという意見もチラホラ……。そんな悩める大人達にオススメしたいのが、今回紹介する『メルトンファラオジャケット』だ。シンプルで落ち着いた配色や程よいミドル丈、無駄を排除したのちに残されたディテールの美しさなど、秋冬シーズンに一着は押さえておきたい大注目の一着だ。
『ファラオジャケット』とは?
このデザインのジャケットを日本では『ファラオジャケット』と呼んでいるが(丈の長いものはファラオコートと呼ばれることも)、実は本国アメリカでは「カークラブコート(ジャケット)」や「カーコート(ジャケット)」と呼ばれている(以下、カーコートで統一)。
1950〜60年代のアメリカでは、古い車をカスタムしてレースに興じる若本達が集まり、それぞれが結成したチーム「カークラブ」が隆盛を極めた。当時の古い車にはエアコン設備がないものが多く、車内にいても非常に寒かったことからドライビング用の防寒着として、または作業時の防寒着として着用されたのが「カーコート」だった。
では、一体なぜ「カーコート」が、日本では『ファラオジャケット』と呼ばれるようになったのか?
これには、アメリカのファッション史を知る上で、欠かせない1本の映画が関わっている。ジョージ・ルーカスが監督を務め、1973年にアメリカで公開された映画『アメリカン・グラフティ』だ。
ちなみに、ジョージ・ルーカスといえば、「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」シリーズの生みの親として知られる偉人だが、若き日の彼が監督を務め、自身の体験した青春時代を映画にしたのが『アメリカン・グラフティ』だといわれている。
この映画『アメリカン・グラフティ』のなかで登場するカークラブ「ファラオ団」が着用していたのが「カーコート」で、この映画が日本でもヒットしたことにより、『ファラオジャケット』と呼ばれるようになった。
『アメリカン・グラフティ』、まだ観ていないという人は、ぜひとも一度観てみてほしい。
『ファラオジャケット』の特徴は?
ほかの古き良きアイテムと同様に、ひとくちに『ファラオジャケット』といっても襟のデザインやフロントがジップ仕様であったりと、様々なデザインが存在する。なので、以下の特徴は、あくまで一般的な『ファラオジャケット』のデザイン例だ。
1:メルトン素材のボディ
ヴィンテージの『ファラオジャケット』には、ウールメルトン以外にもレザーやデニムといった素材を取り入れたものも存在する。しかし、もっとも一般的なのはスタジャン同様に、ウールメルトンを使用したデザインだろう。
2:ショールカラーの襟
柔らかく、伸縮性に優れたリブ素材を配したショールカラーの襟も『ファラオジャケット』の特徴のひとつ。折り返しているリブ襟を伸ばせば、首元の保温性を高めることもできる。こちらもヴィンテージでは、様々な襟のデザインが存在する。
3:スナップボタン
フロントは、スナップボタン仕様が一般的。こちらもジッパー仕様など、様々なモデルが存在するが、よく目にするのはこのスナップボタンタイプだ。
4:長めの丈感
一般的な『ファラオジャケット』は、リブなしの裾処理で、ミドル丈、もしくはロング丈が基本。そのため、『ファラオコート』と呼ばれることもある。動きやすさよりも、防寒性を重視したデザインとなっている。
5:キルティング仕様のライニング
ライナーは着用感が考慮され、滑りやすい生地が配されている場合が多い。また、中綿を入れてキルティング処理を施し、防寒性を高めたデザインも多くみられる。一見、メルトン素材で重厚に見えるが、実際の着用感は軽快だ。
「ヒューストン」製『メルトンファラオジャケット』のディテール
ボディはメルトン生地
ボディには、緻密ながらも重すぎない程よい密度で織られたウール50%×ポリエステル50%のメルトン生地を使用。特有の柔らかい光沢感が主張する。
ダイヤモンドキルトライナー
ライニングには、中綿入りのダイヤモンドキルトを採用。高い保温性に加えて、着心地や袖通りの良さも確保した。
ショールカラーの襟
リブ仕様のショールカラーは長めに設定されており、スタンドカラーとして着用することもできる。風合いあるリブの演出も秀逸だ。
スナップボタン
フロントはメタルのスタップボタン仕様。直感的に、簡単に着脱ができる。
チェーンステッチのワンポイント刺繍
左胸のみにワンポイントの刺繍が入る。刺繍には、当時多用されていたチェーンステッチが採用される。
スラッシュポケット
フロント両サイドには、ボディと一体型のスラッシュポケットを採用。使いやすい傾斜角に設定されている。
内ポケット
左胸の内側には内ポケットを装備。落としたくない小物は、こちらに収納したい。レザーのパイピングがさりげないアクセントに。
裾両サイドの調節ボタン
裾の両サイドには、スリットが配されており、スナップボタンの着脱により、シルエットの調節ができる。
袖口リブに補強
さすがは「ヒューストン」と唸らせられた配慮がコチラ。袖口のリブのなかでも外部との接触が多い箇所には、レザーの補強が施されている。デザインとしてのバランスも極上だ。
『メルトンファラオジャケット』
GREY
BLACK
MELTON PHARAOH JACKET
ウール50%+ポリエステル50%の生地を使用した『ファラオジャケット』。ショールカラーの襟は、長めに設定されており、スタンドカラーにして着用することもできる。フロントはメタルスナップボタンを採用。フロント両サイドのスラッシュポケットに加えて、左胸の内側には内ポケットも装備。裏地には光沢感のあるポリエステル生地に中綿入りのダイヤモンドキルトをデザインし、軽快な着用感やスムーズな着脱を実現した。シンプルなデザインだからこそ、素材感やディテールの魅力が堪能できる一着となっている。カラーはグレーとブラックの2色を展開。流行に左右されない、落ち着いた大人のアメカジアウターとして、ぜひとも注目したい一着だ。
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